産業カウンセラーの活動領域(2)~キャリア開発への援助~
キャリア開発への援助
人材の流動化、転職率の上昇、人材紹介・派遣業者の増加、成果主義の導入など、組織内外で様々な変化が生じています。数年前からは「エンプロイアビリティ」という言葉も耳にするようになり、組織内外において通用する個人の能力・キャリアの重要性がクローズアップされています。最近の資格ブームもこのような影響から発生したものだと思われます。
ちなみに「エンプロイアビリティ」とは、「仕事能力に基づいた雇用可能性」(現代用語の基礎知識2005より)のことです。この可能性には2つの意味があります。ひつとは、現在所属している企業に継続して雇用される可能性で、もうひとつは、他の企業にも雇用される可能性です。
このような個人のキャリア・能力に関心が集まっている現状において、産業カウンセラーは、キャリア・能力の開発において、働く人の上質な生活(Quality of Life)を実現できるように援助する役割を担っています。
メンタルヘルス対策は、働く人が通常・正常な状態になることを援助しますが、キャリア開発においては、通常・正常な状態からより高みを目指すこと、自己実現を援助することといえます。
最後に、働く人の上質な生活(Quality of Life)を理解するために、平成12年度の試験問題を記します。
「QWL(労働生活の質の向上)に関する次の文章のうち、誤っているのはどれか。
1.労働力としての人間だけでなく、人間としての労働者を重視する。
2.労働生活・福祉・教育の水準の向上を目指すが、職場外の生活および余暇活動については個人のプライバシーであるので関与しない。
3.権力に対する意識を民主主義的、参加的なものに変えるとともに、人権意識を高揚させ、女性、人種、身障者差別を排する。
4.マン・マシン・システムに関して、無理、危険、非効率を排した人間工学的な工夫をする。
5.多能化、ローテーション、権限拡大などの作業方式を採用し、労働者の能力開発、キャリア・アップを図るとともにやりがいをもてるようにする。」
解答は「2」です。職場外の生活や余暇活動についても、労働生活・福祉・教育の水準を向上するためには関与が必要です。特に、医療や福祉の世界においては、患者のQOL(生活の質)を重視した全人的医療・ケアが重要であるとされています。
選択肢「4」を補足すると、マン・マシン・システム=「無理、危険、非効率を排する」であり、これは「ゆとり、安全、効率」的な人間工学的な工夫であり、労働生活の質の向上につながります。
« 産業カウンセラーの活動領域(1)~メンタルヘルス対策への援助(前回の続き②)~ | トップページ | 産業カウンセラーの活動領域(3)~職場における人間関係開発への援助①~ »
「産業カウンセリング概論」カテゴリの記事
- 逐語記録の作成(2007.01.11)
- 事例検討の留意点(2007.01.10)
- 事例検討の種類(2007.01.09)
- 産業カウンセラー倫理綱領(実効性の確保)(2006.09.06)
- 産業カウンセラー倫理綱領(倫理委員会)(2006.09.05)
« 産業カウンセラーの活動領域(1)~メンタルヘルス対策への援助(前回の続き②)~ | トップページ | 産業カウンセラーの活動領域(3)~職場における人間関係開発への援助①~ »
コメント